ナウル共和国では、働かなくても食べていけるようになったことで、働きもせず毎日「食っちゃ寝」の生活が当たり前となり、食事はほぼ100%外食に頼るような生活になりました。
 そうした生活が30年にもおよんだため、肉体が蝕(むしば)まれて、全国民の90%が肥満、30%が糖尿病という「世界一の肥満&糖尿病大国」になりました。そればかりか、精神まで蝕まれて、勤労意欲が消え失せ、そもそも「食べるためには働くのが当たり前」という認識すらなくなっていきます。
 すでに20年も前からグアノ(リン鉱石)が枯渇するだろうと予測されていながら、ナウルの人々は何ひとつ対策も立てず、努力もせず、ただ日々を自堕落に生きていくことしかできない民族となっていったのでした。

ナウルの“ほんとうの悲劇”
 しかし、ナウルの“ほんとうの悲劇”は、肥満でもなければ糖尿病でもなく、ましてや勤労意欲が失われたことでもありません。
 さきほど“地獄の一丁目”という表現を使いましたが、文字通り、彼らのほんとうの悲劇はここから。一番の問題は、もはや二度と「“古き佳きナウル”に戻ることができなくなった」という事実です。
 いざグアノが枯渇したとき、彼らが考えたことは「嗚呼、夢は終わった。我々はふたたび額に汗して働こう」ではありませんでした。すでに精神が蝕まれ切っていた彼らが考えたことは、「どうやったらこれからも働かずに食っていけるだろうか?」でした。すでに“末期症状”といってよいでしょう。
 そこで彼らがまず取った行動は、国ごとマネーロンダリングの魔窟となり、世界中の汚れたカネで荒稼ぎすること。それがアメリカの怒りを買って継続不可能となると、今度はパスポートを濫発してテロリストの片棒を担いで裏金を稼ぐ。それもアメリカから圧力がかかると、今度は舌先三寸でオーストラリアから、中国から、台湾から、日本から資金援助を引き出す。
 テロリストへのパスポート濫発などといったことに手を染め、ほとんど“ならず者国家”と成り下がった惨状ですが、それでも彼らはけっして働こうとはしません。
── 病膏肓(やまいこうこう)に入る。
 ナウル人が額に汗して働くことはこれからもないのだろうと、筆者は思います。ナウルが亡びる日まで。