もうすぐ市役所だってところなんだが、その前に橋があるんだ。
そうすると保護者たちが「川の水がない」ってざわつき始めてた。その後すぐにどこからわからんが、おっさんが「きたぞーきたぞー」と大声で叫び始めたからすぐ近くのアパートの上に逃げた。そのすぐ後に津波は押し寄せ、今まで俺達がいたところを飲み込んだ。

アパートの上で安堵している母親達といっしょに自衛隊の救助を待っていたんだけど、暇なので俺は津波の様子を見ていた。そうしていると波の中をおっさんが普通に歩いていたり、チャリンコ漕いで橋の上をわたっていくおっさんが結構いるんだ、3分に一人くらいで。そこで俺は母親に
「普通にわたってる人いるから、降りて避難しようよ」
って言ったんだけど、母親には
「そんな人いねーし、普通に死ぬからやめな。」
って言われたんだ。

変だなーって思いながらしゃーなしで救助を待って、自衛隊にボートに乗せてもらって逃げたんだ。

思い出すと確か、家の一階天井あたりまで水が来てるはずなんだ。そのときは一切疑問に思わなかったけど、水かさが減ってからやっと救助が来たのにその高さ。俺が見てたのはおばけか水死体だったんだろうなと育ってから気づいた。

ちなみにちっちゃいときのことだけど母親から状況と俺の発言聞いてるから思い違いではないと思う