直球の角度が変わった模様

 「直球の角度が~」と言われてもピンとこないかもしれない。バッターは基本、地面と平行に振る「レベルスイング」が多い。ここにボールの角度が付けば、その軌道に合わせるのが難しくなり、一点集中になる。ようするに、バットに当たる確率は下がっていくのだ。菅野が求めた「角度」には、昨年から20センチの差が出来たという。

 久保巡回投手コーチとの二人三脚は、右足の使い方から見直した。186センチの身長をなるべく保ったまま、体を打者よりに倒し、近づけていく。久保コーチによると「右足は地面から45度まで倒していい」という。その助言に対し菅野は「自分の中でうまくアレンジしています」と工夫した。その軸足が機能しなかったのが昨年までのピッチング。「右足がうまく使えてないんですよ」という意外な悩みが超一流を苦しめていた。

 球を離す位置が劇的に変わった。地面から166センチの高さだったリリースポイントは今年、186センチまで上がった。20センチも変われば打者の目線も上がる。球離れも遅くなり、バッターにはより近く感じたはずだ。「スライダーの曲がりが全然違う」とも効果を口にした。すべての球種に進化が見え、あとはコンディションを整えるだけで十分だった。

 素人的に言えば、突っ立って投げているようにも映る。開幕当初はぎこちなく見えたが、その点は菅野も同じ感覚だったのだろう。なじんでいけば、さらなる精度アップへと欲が出る。常に上のレベルを目指すから、球界トップに君臨できるわけだ。よく「復活」という言葉を耳にするが、違う。ここにきて「成長」という表現が正しいと改めた。(報知プロ野球チャンネルMC・水井 基博)

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