岩田
シリーズものは何でも、伝統とか守ってきたものがあって、
シリーズを重ねるにつれて洗練されて高度になっていく一方、
必ず何かが失われていくんですよね。
その意味で、『ストリートファイター』が
一時的に失っていたものは何だったんでしょうか?

小野
いちばんは、間口を狭くしたことなんです。
玄関に自らの手で、無意識に鍵をかけちゃっていたんです。

岩田
入れた人には、誇らしく、居心地がいい空間ですよね。

小野
そう、誰もできないことへの快感というか。
だから僕らつくり手も、その快感に酔ってしまって。
ありがたいことに『III』は約14年経ったいまでも、
世界大会が開かれるぐらい、現役で動いているんです。

岩田
すごいですね。やはり、極められた頂点なんですね。

小野
はい。だから『ストリートファイターIV』をつくるときは、
「羽生名人しかできないことはやめましょう」と言いました。
竜王戦はすでにあるから、僕らが用意する必要はないんです。