女はほとんど胸を覆わず、男は簡単な腰布をまとっているだけである。

男性だけでなく女性も裸が仕事着だった。
「女性も家の中で仕事しているときでも、
暑いと止むを得ず着物をおおかた脱いでしまうので、
裸同然の姿となる」
と、ヴェルナー艦長は言う。
柳田国男も
「夏の仕事着には裸といふ一様式もあつた」
と指摘するように、高温多湿という日本の気候上、
簡便な衣服でいたり衣服そのものも脱ぎ去って裸でいることは、
ある意味自然だったのであろう。

公衆浴場から裸のまま自宅に帰ることは特に不思議でもなく、
街頭を闊歩する裸体の人物を気にとめる人もいなかった。
この驚くべき習慣についても多数の外国人が文字にしている。
アンベールの記述はこうである。
「入浴客が男であっても、女であっても、
通りへ出て風に当たりたいと思ったら、
裸体で歩いても、日本の習慣では当たり前のこととみなされ、
誰も咎めない。
そのうえ、熱い湯に入って、
海老のように真赤になった美しい肌の色を褪めさせずに
自宅へ帰りたいと思ったら、裸体のままでいても、
いっこう差し支えない」。

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