土砂災害で流されてきたがれきは、いまだに撤去されていない。

「上流の集落に住んでいたおばあちゃんの家は土砂にのみ込まれ、柱一本残らなかった。数年前に亡くなった娘さんの位牌も流されてしまったようで、おばあちゃんはよくここに来ては、遺品を捜している(写真)。この前、がれきの中から娘さんが着けていた腕時計を見つけたって。でも、ずっと捜し続けて出てきたのはそれだけ」

 苦しい実情をせきを切ったように話し出した男性は、最後にこう訴えるのだった。

「被災した時に新聞記者がここに来て、俺らの前で『人が死ななきゃ記事にはならない』と言ってた。もっと大変な人がいるからそれはわかるけど、俺らもまあ……しんどいぞ。地盤も緩んでるだろうからこの集落にはもう住めないし、これから新しく家を見つけなくちゃならない。生活再建には金だけじゃなく気力も必要だけど、どっちももう残ってない」

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/364839