広岡達朗コラム

いつからプロ野球は義理と人情を軽んじるようになったんだ。上沢直之のことである。
大リーグに挑戦するが通用せず、惨めにもたった一年で逃げ帰ってきた。それならば古巣の日本ハムに戻るのが当然ではないか。
しかも日本ハムの球団施設で練習していたと聞く。そんな恥知らずの裏切り行為を良く出来たものである。
私がロッテのゼネラルマネージャー時代、伊良部秀輝が大リーグに移籍したいと騒動になったことがある。
伊良部はFA権を持っておらず、今のようなポスティングシステムもない。球団としては伊良部の言い分だけを聞くわけにはいかない。
それでも最終的にトレードという形で決着をさせたのは、これ以上騒動を大きくしても双方にメリットがないと判断したためだ。
私が伊良部に対して言ったことは「成功するまで戻ってくるな」ということだ。「ダメなら戻ればいい」という甘い考えではダメだし、
そんな選手を球団が迎え入れるつもりもない。伊良部はヤンキースで二桁勝利を挙げ、チャンピオンリングを二つ手にした。
その後阪神へ堂々たる凱旋をし、チームを18年ぶりのリーグ優勝に導いた。
半端な覚悟の持ち主では通用するはずもない。それは日米問わず同じことである。その程度の覚悟もないのなら、まずは球団との義理を大切にすべきなはずだ。