僕はリビングのソファに座り、ぼんやりとテレビを眺めていた。
そんな静かな時間を破るように、愛犬のコロが僕の前にトコトコと歩いてきた。コロは20歳になる老犬だ。

「どうした、コロ?」

すると、コロがじっと僕を見上げて、小さな声で呟いた。

「パパ……ぼくね……安楽死したい」

その言葉に、僕は一瞬息が止まった。耳を疑うどころか、自分の頭がおかしくなったのかとさえ思った。

「……喋った…?いや…それより何を言ってるんだよ、コロ」

震える声で問い返すと、コロは少し伏し目がちに続けた。

「ぼくもう20歳で、お目々もほとんど見えないの……最近オシッコもお散歩までガマンできないことがあって……」

「それでもいいんだよ! 全然迷惑なんかじゃない!」

僕は声を荒げてしまった。するとコロは、静かに首を振った。

「迷惑かけちゃうし……もうお世話になれないよ……」