山田健太は28歳のとき、強盗致傷の罪で懲役15年の判決を受けた。仲間と共謀してコンビニを襲い、抵抗した店員に軽傷を負わせてしまった事件だった。酒に酔った勢いとはいえ、健太の手は血に染まり、その瞬間の恐怖と後悔は今でも忘れられない。
刑務所に入った当初、健太は全てを諦めていた。「15年もここで腐るのか」と自暴自棄になり、鉄格子の日々に希望を見いだせなかった。しかし、ある日、刑務所の作業時間後に訪れた図書室で、ふと手に取った簿記の入門書が彼の運命を変えた。
「何か一つでも身につければ、出所後にやり直せるかもしれない」
そんな小さな思いが胸に灯った。中卒で勉強とは無縁だった健太にとって、最初は数字の羅列すら苦痛だった。でも、時間が有り余る刑務所生活では、やるかやらないかの二択しかない。健太は「やる」を選んだ。
簿記3級から始めた。参考書を何度も読み返し、独房の薄暗い明かりの下でノートに計算を書き殴った。理解が進むにつれ、勉強が少しずつ楽しくなった。3級に合格したとき、刑務官から「よくやったな」と小さな賞賛をもらい、初めて「自分にもできる」と感じた。
そこからは資格取得の道にのめり込んだ。簿記2級、宅建士、行政書士。試験会場には行けないため、模擬試験で実力を試し、目標スコアをクリアするたびに達成感を味わった。受刑者仲間には「そんな努力、出所しても無駄だろ」と冷やかされたが、健太は意に介さなかった。自分を変えるため、そして家族に顔向けできる人間になるためだ。
15年後、43歳で刑期を終えた健太は出所した。迎えに来たのは、髪に白髪が混じった母と、結婚して子供を連れていた妹だった。母は涙ながらに「頑張ったね」と抱きしめてくれ、妹は「資格オタクになった兄ちゃん、意外とかっこいいよ」と笑った。
出所後、健太は簿記の知識を活かして会計事務所のアルバイトに就いた。最初は簡単なデータ入力ばかりだったが、真面目な姿勢が認められ、2年後には正社員に昇格。行政書士の資格も活かし、副業で地域の書類作成を手伝うようになった。過去の罪を背負いながらも、健太は自分の手で未来を切り開いていった。
ある夜、母がぽつりと言った。「お前が刑務所で勉強してるって聞いたとき、初めて安心した。あの15年は無駄じゃなかったんだね」。健太は静かに頷いた。鉄格子の日々は、ただの「罰」ではなく、彼にとって「再生」の時間だったのだ。
懲役15年を食らった男の再生物語〜15年の軌跡〜
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1それでも動く名無し
2025/03/08(土) 23:44:18.40ID:/sBHSo+402それでも動く名無し
2025/03/08(土) 23:53:00.82ID:Dg3a/PQ40 強盗致傷で被害者軽傷でも懲役15年もなるんやな
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