熱投を続けるエースの血が沸騰した。9回の投球練習。登場曲の「悲しみをやさしさに」が再度流れ、ファンの大歓声とともに上沢直之投手(29)を後押しした。選手側の要望に応えて新球場・エスコンで初めて実施された粋な演出に「ブチ上がりましたね」。1死一塁から森を二ゴロ併殺で締めくくり、114球で今季2度目の完封。9回3安打7奪三振と圧巻の内容だった。

 新球がさえ渡った。7回途中5失点だった前回登板(8月25日、対西武)後、伊藤の助言も参考に従来より握りを浅くしたフォークを導入。「決め球でもカウント球でも使える」とシンカー方向への変化が加わった新たな武器を最速150キロの直球に織り交ぜ、凡打の山を築いた。

 昨オフにメジャー移籍希望を表明。球団に熱い思いを訴えた。「挑戦の一年。リスクはあるけど、変えていかないと」と決意して臨む12年目。伊藤ら後輩にも積極的に意見を求め、貪欲に進化を追い求めている。ネット裏にはかつてのチームメート・大谷が在籍するエンゼルスをはじめ、ロイヤルズ、レンジャーズ、Dバックス、レッズ、カブスの6球団、計10人のメジャースカウトが大挙。シーズン中は目の前の登板に集中しているが、昨オフの契約更改で明かした「世界の選手が集まる野球ってどんなものか経験してみたい」という思いを胸に秘め、目を光らせるスカウト勢に自身の力を存分に見せつけた。