少年野球が危機的状況にあるワケ

「高校野球は2015年あたりから新入部員が激減し、毎年1万人くらい新入部員が減っていた時期があります。中学軟式野球を主宰する中体連も50%減。もちろん学童野球も神奈川県では7年前に2000チームあったのが約500チームに。これは全国的な傾向です」

こう語るのは慶應義塾高校前監督の上田誠氏だ。上田氏は1991年に慶應義塾高校野球部監督に就任。母校を43年ぶりに甲子園に出場させた名将だが、アメリカ留学を経て子ども本位の野球指導の必要性を痛感した経験があり、『エンジョイ・ベースボール』という著書でも知られる。今は学童野球や少年野球の指導も行い、その現状に警鐘を鳴らしている。

「学童野球・中体連・高野連は運命共同体です。わが国の野球の底辺を支える学童野球は今、危機的状況にあります。この危機的現状を作っているのは、@試合過多(1年間に200試合以上しているチームがあり、ローカル大会への規制がない)Aスポーツ障害の増加(小学生でトミージョン手術もあり、スポーツ医学の知識が指導者に乏しい)B指導者の旧態依然とした指導(罵声や長時間練習)C野球用具の高騰(ビヨンドマックスのバットが約4万円。他競技の2〜3倍の費用)Dお茶当番などの保護者の関わり方が時代遅れE勝利至上主義(すべてトーナメント、同じ選手ばかりが出場する)F他競技の上手な振興策(サッカーやバスケット、バドミントン)に遠く及ばない、など原因は数えきれません。

この学童野球を仕切る全日本軟式野球連盟は他の野球団体同様、実働部隊と資金の両面で充実しているとは言えません。そして全国の1万1000以上の支部が中央からのガバナンスが利いた状態で学童野球を運営しているとは言い難い、というのが実態です。球数制限・年間試合数・練習時間・シーズンオフ・子どもに合ったルール改正などやるべきことはたくさんありますが、まずは協議・決定・実行のプロセスの整備が求められる、それが現状ではないでしょうか」

高校野球やプロ野球は相変わらず世間の注目を集めるが、その足元である少年野球は競技人口が減少し、競技の環境も悪化している。しかし、それを解決すべき大人は努力はしているものの十分とは言えず、しかもまとまっていないのだ。