0001それでも動く名無し
2022/03/31(木) 22:41:08.52ID:8J78tiNUp先発秋山が突如失点、打線も勢いを見せず連敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年は100敗だな」の声
無言で帰り始める選手達の中、阪神の指揮官矢野は独りベンチで泣いていた。
現役時代に手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる選手・・
それを今の阪神で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」矢野は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、矢野ははっと目覚めた どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って予祝をしなくちゃな」矢野は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、矢野はふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出した矢野が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにタイガースの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする矢野の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「矢野、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った矢野は目を疑った
「か・・・金本?」 「なんだ矢野、居眠りでもしてたのか?」
「ほ・・・星野監督?亡くなったはずでは・・・」 「なんだ矢野、かってに監督を死なせやがって」
「下柳・・・」 矢野は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:今岡 2番:赤星 3番:金本 4番:桧山 5番:アリアス 6番:内川 7番:矢野 8番:藤本 9番:井川
暫時、唖然としていた矢野だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
野口からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走する矢野、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなっている矢野が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った