プレーボール直後の160キロから、動画に収める人がいた。圧倒的な球速に、マスク内の「おぉ〜」が場内に低く響く。3球目で163キロ、4球目は右打者岸の内角から入る144キロスライダーで見逃し三振に。「前回は変な力みで制球が良くなかったので、しっかり脱力して、制球重視で投げられたのが良かったです」。5回までは毎回の“マルチ奪三振”。8回で13個の三振を奪った。

回を追うごとにわずかに落ちる平均球速が、微増に転じたのが6回だ。「先頭を取れるように。そこがすごく大事になってくると思うので」。大船渡高時代、グラウンド整備後に流れが変わりがちな6回はむしろ、ややスピードを落とすことが多かった。今は制球重視でも球速は同じ−。8回にも160キロが2球。「しっかり脱力してペース配分できたところかなと思っています」と話した。

バットも何本かへし折った。ファウルも含め、打者に初めて引っ張り方向に打たれたのは61球目。「カウントによって甘くいっていいところは思い切っていけたし、しっかりコースに投げ切らないといけないところは投げ切れたので」。直球での空振りはプロ入り後最多の12球。73・7%というストライク率の中で圧倒した。大きくなっても柔軟なままの肉体が、ワールドクラスを生み出す。