「あー"気持ちよかった!!"」

突然の大声に身体がすくんでしまう。
どうしても彼のこの習慣には慣れる事が出来ない。
未来の姿を先に喜び、祝ってしまうことで現実を引き寄せることを予祝という。さしずめ射精の瞬間気持ちよくなることを予祝しているのだろう。私も予祝はよく行うが彼ほど大声ですることは出来ない。さすがプロ野球の監督と言ったところか。
そう、彼はプロ野球球団の監督をやっている。日本の中では一二を争う人気球団の監督だ。
「誠司さん、しよっか?」
私のモノを握りつつ潤んだ目で誘ってきた。返答する前にモノは彼の口の中へ入り見えなくなっていた。
ジュッポジュッポジュッポジュッポ…
彼が監督をしている球団は今シーズンなかなか成績が出ていないらしい。人気球団だけにバッシングも大きい。それでも休養することなく監督を続けている。
「誠司さんのおかげです」彼はよく言うが決してそうは思わない。
グポッグポッグポッグポッ!
ペースが早くなってきた。ちょっと待ってくれ。このままでは出てしまう。今日は餅職人らしく粘り強く愛しあいたいんだ。
彼の頭をポンポンと叩くと口を離してくれた。口角には一筋の涎。とても淫靡だ。
涎を舐め取りつつ、彼が先程までしゃぶっていたモノなど気にせずそのまま深くキスをした。
ンチュンチュ…ハァ…ンチュ…
この身体でどれほどまでのプレッシャーを受けて来たのだろうか。現役時代は捕手でありながら外野を守らされたこともある。とある球団からはトレードで放出された。放出先では監督にリードを批判され続けた。度重なる苦難にそれでも彼はめげずに努力してきた。
だが、引退試合でとても辛いことがあったらしい。寝言でMという男の名前を呪詛のように呟いているのを聞いたことがある。
努力だけではどうしようも無い運命、彼はそれに一度絶望したという。それでも信じ、祈り、様々な人に助けられた。全て彼の人徳が成すものだ。決して私のおかげなどではない。
お互いのモノは最高潮に硬直してきた。
さぁ次は私の番だ。彼の菊をどんな文字で染め上げようか。"波"か"藤"か…
勘案する私に向かって彼は笑顔で言った。
「誠司さん、ありがとうございます」