「いやあ、困りました。いない……って言っても、こんなにいない年もないでしょ」

 あるスカウトの方が、ネット裏の席につくなり、そうぼやいた。

「ほんと、その通り!」

 たった今まで、別の話で盛り上がっていたスカウトが、間髪入れずに共感のひと言を発した。

「だいたい僕らの仕事って、毎年、いない、いないから始まるんですよ。
でもセンバツが終わって、学生野球や社会人が始まって、今ごろになるとどんなにいない年だって、
その年のドラフトの“核”になるような選手が4人か5人は出てくるもんですよ」

「去年だったら、小園(健太・市立和歌山高→横浜DeNA1位)とか、森木(大智・高知高→阪神1位)とか。
誰に訊いても『そりゃ1位でしょ』っていうのがいたし、
大学だったら、隅田(知一郎・西日本工業大→西武1位)なんか、
この時期には、九州見てる人から『1位じゃなきゃ獲れない』って情報が入ってましたもんね」

そういう誰もがこぞって推すような存在が、今年のアマチュア球界にはほとんど見当たらず、
困ってもいるし、心配もしているという。