キューバとの結びつきは球団の努力が大きいが、その一方で、選手と名古屋の人々の草の根レベルの交流もある。

 “アリエルの世話人”を自称するのが、冨田征治さん。名古屋在住の会社員だ。昨年11月にアリエルのSNSにアップされた家族写真は、冨田さんがセッティングしたもの。アリエルが遠征で不在時、カミラ夫人と一緒に1歳のお子さんのための託児所とプリスクール探しに奔走したこともあった。

 名古屋出身の冨田さんは子どもの頃からドラゴンズファン。海外赴任で野球から離れていた時期もあったが、06年に帰国してからはドラゴンズ熱が再燃。16年にフィリピンに赴任したときは、地元のドラゴンズ応援団体に即座に入会した。「その国に馴染むのは、地元で趣味の友達を作るのが一番なんです」と冨田さん。帰国後はナゴヤドームに通い詰める日々が続いた。

 アリエルとの交流はSNSがきっかけだった。アリエルが支配下登録されたとき、スペイン語でお祝いのDMを送ったところ、すぐに返事が届いたという。冨田さんにはこんな思いがあった。

「自分が海外で10年ほど平和に暮らせて、しっかり仕事ができたのは、その国々の人が助けてくれたからだという思いが強くありました。フィリピンで幼い子どもを含めた家族と暮らせたのも、地元のヘルパーさんやドライバーさんたちが助けてくれたおかげです。何かの縁で名古屋に住んでくれている外国人の方にも、地元の人間がちょっと手をさしのべることで生活が楽しくなったり、困りごとを助けたりできるかもしれない。だから、キューバから名古屋に来てプレーしているアリエルたちのことが気になって応援していたので、支配下登録がすごく嬉しくて思わずメッセージを送ったんです」

 アリエルからの返事に驚いた冨田さんは、英語とスペイン語を織り交ぜてメッセージのやりとりを続け、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が明けたタイミングでアリエルとカミラ夫人に初めて対面。「“本当に来てくれた!”と鳥肌が立ちました。そのときはキューバの話で盛り上がりましたね」(冨田さん)。