逮捕されたのは同市保土ケ谷区峰沢町の無職、吉村敏和被告(48)=11日に起訴済み=で、取り調べに対しては「間違いありません」と素直に犯行を認めたという。捜査関係者によると、この吉村被告、現場となったビルにはこれまでも出入りをしていたことがあったらしく、実際、転落事故前に建物に入居する事務所に立ち入ったなどとも話しているという。

隣のビルまで2メートル弱


ただし、吉村被告は「気が付いたら病院だった」とも供述しており、転落時の記憶は全くないとも話している。なぜ、ビルから〝身を投じる〟というまねをすることになったのだろうか。いや、ひょっとしたら本人にはそのつもりはなかったのかもしれない。

というのも、実は現場となったビルの隣には別のビルがあり、その間隔は2メートル弱といったところ。「捕まりたくないと思って必死だったのだろう」(捜査関係者)という吉村被告は、ビルからビルへ飛び移ってそのまま警察官を振り切ろうと考えていたのかもしれない。覚醒剤による幻覚の可能性もあるだろう。

ただ、この推測が成り立つとしても、吉村被告は体重100キロはあろうかという太めの体格だといい、その後の顚末(てんまつ)は前述のとおり。もっとも「屋上から転落した際は『ズルズルと落ちていった』と目撃者は話している。どうも、大きな体が建物のどこかに引っかかったようだ。そのまま地面に直に落ちるよりも衝撃が緩和されて助かったのかもしれない」(同)。ある種の悪運というものだろうか。

神奈川県警薬物銃器対策課によると、昨年、県内での違法薬物をめぐる逮捕者は1136人を数えた。つくづく手を出してはならないものであることを、今回の転落事故は物語っているといえるのではなかろうか。