>>562
まず、人権という言葉は、人間が人間であることから当然に有する権利を意味します。したがって、日本国憲法が「基本的人権」を定めていることは、外国人の人権も原則として保障しています。このことは、明治憲法が「臣民の権利」を定めていたのとは違います。臣民とは、帝国臣民、すなわち当時の天皇主権下の国民を意味し、明治憲法は、外国人の人権を保障していませんでした。日本にかぎらず、19世紀につくられた憲法では、一般に、外国人の人権を保障する必要はないと考えられていました。なぜならば、国と国との戦争が多く繰り広げられていた時代、ナショナリズムの高まりを反映して、国民を味方、外国人を敵と考える見方が当時は一般的だったからです。また、明治憲法は、厳密には、国民の人権も保障しておらず、人権とは違う、臣民の権利は、法律しだいで保障されたり保障されなかったり自由に決めることができるとされました。国会が治安維持法という法律をつくれば、言論の自由や結社の自由の保障は、大きく制限されました。

 これに対して、日本国憲法が定める人権は、国会や政府による人権侵害に対しても、裁判所が憲法の番人として、違憲審査制により、人権違反の法律や命令を無効とすることができるようになっています。日本にかぎらず、第二次世界大戦後につくられた憲法は、一般に、人権を保障しています。その背景には、政府のまねいた戦争の惨禍への反省や、人を人として尊重しないナチスのホロコーストに代表される人権侵害への反省があります、18世紀につくられたフランスの人権宣言やアメリカの権利章典にみられた人権という考え方が、世界的に広まるようになり、第2次世界大戦後は、人権のルネッサンスの時代と呼ばれています。同時に、一国の憲法だけで人権を保障するものではなく、今日の人権保障は、国連を中心に国際的に保障するという考え方も一般的になっています。