あのさぁ…

こまやかな手紙のうえ、起請文まで頂戴してかたじけない。
酒の席でひどいことを言ってしまったようだ。
本当に貴殿を疑っていたとしたら、手紙か使いの者をやって諦めるところだが、疑っていなかったので、何もしなかったし、何も言わなかった。しかし、酒の勢いでつい、酔っていたためまったく覚えていないのだが…。

ある乞食坊主が落としていった文に、かの男が貴方に惚れているということが書いてあった。
そんなことはないと思ったものの、貴方のことをよく知っているようだったので、気持ちを確かめたいと思い、酒の勢いで暴走してしまった。

(身の潔白を証明するために)貴方が腕を突いて血判を押したと聞いて、心苦しく思っている。
私がそばにいたら、脇差にすがりついてでも、そんなことはさせなかったのに。
私も指か腕を突いて、お返しをしたいところだが、今は子も孫もいる身。
そんなことをすれば、年甲斐もないと人に笑われ、子どもに迷惑をかけてしまうと思い、思い止まっている。
ご存知の通り、若い頃は酒の肴に腕を割き、股を突き、衆道の道を突き進んだものだが、今は世の笑いごとになってはいけないと思って控えている。
けっして体を傷つけるのがいやで、やらないのではない。私の腕や股は隙間もないほど傷だらけだ。
かつてはこのようなことを誇ったときもあったが、今はどうしょうもない。
しかしこのままでは、あまりにも貴方に申し訳ないので、伝蔵が見ている前で起請文を書き、血判を押して届けさせるので、どうか許してほしい。
今日にも増して気兼ねすることなく、愛情を寄せてくれたら、海山ほどに嬉しい。

1月9日 正宗 (印)

返す返す恥ずかしいが、どうか私の気持ちを分かってほしい。