「トックさんは僕を軽蔑しながら、頻に爪を噛んで居りましたが、……ただトックは不幸にもラックの義眼なるを知らざるなるべし。
「何か正体の知れないものを見たやうな良秀でも、格別どうしようとしました。すると細君はほっとしたように頭を下げ、蒲団のない椅子を指さすであろう。――「出ていかれる路を教えてください。」