>>574
「じゃあ、オープン戦でもマツヤニを使え。オレが責任を取るから、シーズンでも使え」

 耳を疑いました。監督は真顔だから冗談ではない。隣のコーチにも聞こえている。固まりましたよ。

「のし上がるためなら、なんでもやってやる」
「イヤイヤイヤ、野村克也が責任取るわけねえじゃん! オレが捕まるよ。いくら子どものオレでもそれくらい分かる!」

 と内心叫びました。同時に「やばい。監督がここまで言うくらい本気なんだ。こっちも本気で覚えてシュートをものにしないとまずい。だってオレ、違反したくねえもん」

 と心がひりひりしました。あのときのやり取りを、就職先を探していた頃に思い出したんです。

「『のし上がるためなら、なんでもやってやる』。それくらいの覚悟で挑め。変われ。ものにしろ。貪欲になれ」

 そう教えてくれたんだ、と思いました。「ユニホームを脱いでからの人生が大切なんだ」ともおっしゃっていたな、と。


これ話の文脈的にそういうことじゃないだろ