「森ももう3年目になる。若いうちに朝から晩まで野球のことばかりやる時期がなくては駄目だ」

球団に進言したのは2018年までDeNAのゼネラルマネジャー(GM)を務めた高田繁氏(76)だった。
退任後は球団の親会社、DeNA本社のフェローを務めており、同社の会長でもある南場智子オーナーと練習を激励視察した際に球団側に伝えたという。

現役時代は巨人でプレーし、V9時代を支えた名選手。森自身も必死に練習していたはずだが、古き良き昭和の野球を生き抜いた高田氏は物足りなく感じたのかもしれない。
高田氏の助言を機に石井琢朗野手総合コーチが教育係として徹底指導した。今年の春季キャンプでも指導は続いた。

「高田さんからの話があってから、強化指定選手としてずっと練習をさせた。その分だけうまくなってきている。やはりいい選手だね」

球団幹部が語った。今季は初の開幕スタメンも狙える位置にいたが、3月のオープン戦で負傷し、6月3日にようやく1軍に合流した。
23日にはプロ1号を放ち、守備では三遊間の深いところから矢のような送球で補殺を奪う強肩。3盗塁も記録している。

高田氏はGM最後の大仕事として臨んだ2018年のドラフト会議で、同年のナンバーワン遊撃手と評価されていた小園(報徳学園高)を1位で指名したが、競合した広島とのくじ引きで外した。
その翌年に獲得したのが森。高田氏は現場を退きながらも遊撃手を育てる使命を感じているのかもしれない。

今でも月に1度のペースで横浜スタジアムで南場オーナーと観戦している。躍動する若武者は高田氏の目に、どう映っているのだろうか。