「この失敗はチームにとって大きい」から今何をすべきか。それを認識させてくれたのが栗山さん

 コーチでさえ選手の顔色をうかがわなきゃいけない時代になっているじゃないですか。でも栗山さんはご自身がバント失敗をしたときに(バント練習に)行くわけですよ。自分が身をもってやる。「この失敗はチームにとって大きい」と、今自分が何をしなければいけないというところを認識させてくれた。バント練習なんてもちろん楽しいわけじゃないし、みんな打ちたい。そのなかで、こういうことも苦しい時にやらなきゃいけないということを僕は伝えられた気がしました。

 僕も同じことを若い選手に言ったことがあったんですけど、ダメでしたね。それはは、僕の説得力とか、人間的に「この人の言葉を聞いてどうなる」という想像がついて伝わらなかったんだろうなと思います。受け取る側の問題じゃなくて、受け取らせるような言葉の人間かどうかという意味において、この差は大きいですよね。だから栗山さんの深みっていうのは余計に感じます。

 プロ1年目の時に「栗山の練習する姿だけ見ておけ」と当時のコーチに言われたことからその姿勢を見て学ぶようになりましたけど、一緒に9年間やらせてもらったのは大きかったです。練習をすれば上手くなるというよりは、練習をやめた時に自分に説明がつかない。また、逆も同じで結果が出た時にも理由がつかないということです。その日その日で結果が出るとか、ラッキーが転んでくるっていう処理の仕方はしていないので、今のトレーニングであり、何かに抵抗している姿が、何かの時に返ってくる。自分をどこかで助けてくれるんじゃないかと思って継続することができた。その姿を一番想像しやすく見させてもらったのは栗山さんでした。