そんなTとSの絡みでいえば、あれから1年が過ぎた。2021年7月6日、神宮球場で事件は起きた。阪神の攻撃中、二塁走者の近本がまぎらわしい動きをした、とヤクルト村上がアピールした。

 すると、ここからすさまじいことになった。三塁ベンチにいた監督の矢野ら首脳陣が、村上に向けて大声で怒鳴っていた。これまでなら、その肉声は放送にのらないが、いまはネットの情報がすごいから、「アホ、ボケ」など生々しい言葉の数々が拡散された。ネットでの反応は「まだ若い村上に、あれはない」「監督として品性に欠けるもの」と、矢野は悪者扱いされ、村上は勇気を出しての行動を「堂々として、立派だった」と、両極端な立場に立つことになった。

 あれを機に、ヤクルトがジワリジワリと阪神を追い詰め、阪神はというと跳ね返す余力は残っておらず、ヤクルトはそのまま日本一に上り詰めたのである。