成功している人のアピールによって、精神状態が悪くなるリスク
 地位が下がったと感じるのはこれまでも同じだったと思うかもしれない。それは確かにそうなのだが、
今の私たちのように起きている時間の半分もそんな情報にさらされているわけではなかったし、完璧な演出がされていたわけでもなかった。
友人が修整して投稿した写真を次々と見せられるばかりでなく、何千人、何万人というインフルエンサー、
つまりお金をもらって素晴らしい人生をアピールしている人たちの存在によって、自分では達成不可能なレベルにゴールが設定されてしまう。

 私たちは文字どおり1分ごとに自分より素敵な人、賢い人、リッチな人、人気のある人、成功している人がいることを思い知らされる。
そのため常にヒエラルキーの下へ下へと落ちていくように感じるのだ。精神状態が悪くなるリスクはそこにある。

 ヒエラルキーにおける地位を確認するのをやめられないのは、脳が孤独を避けたいためだ。
集団から追い出されないように、脳は常に「自分はこのグループに馴染めているだろうか」「こんな自分で大丈夫だろうか」「この集団に受け入れてもらえるくらい自分には価値がある? 賢い? 面白い? 美しい?」と問い続けている。
今の私たちは同じ問いを、脳が進化したのとはまったく異なる環境下でぶつけることになる。
私たちのカロリー欲求がカロリーに乏しい世界で何十万年も過ごした上で進化したのと同じことだ。カロリーが無料同然の今の世界では壊滅的な影響を受ける。