京都府の柘植(つげ)彩さん(46)は、市民マラソン大会の残り1キロ地点で倒れた。沿道にいた人がすぐに異変に気付いて心臓マッサージを始め、救急車が着くまで6分間、懸命に胸を押し続けてくれた。
 救急車よりも、AEDを載せた大会の救護車のほうが早く現場に着いていたが、AEDは使われなかった。彩さんの心臓が再び動き出したのは、倒れてから45分後。その間は脳に酸素が届かず、意識障害が残った。体はほとんど動かせず会話は難しいが、まばたきや発声で意思を伝える。
 「女性だから」という理由でAEDが使われなかったことを夫の知彦さん(54)が知ったのは、大会から約1年後のことだった。AEDは電極付きのパッドを肌に貼り付け、電流を流して心肺を蘇生する装置だ。パッドを肌に直接つけるため、男性よりも女性に使われにくい傾向がある。知彦さんは「女性だから命が助からないことがあってはならない。繰り返し講習を受け、AEDについて正しい知識を持ってくれる人を少しずつ増やしたい」と話す。いまは小学校や中学校に対し、AEDの講習をするよう訴え続けている。
https://www.asahi.com/articles/ASPB4559BP91ULBJ00N.html