0001それでも動く名無し
2022/08/24(水) 16:48:15.48ID:vYVT7hbFa先発上原が大量失点、打線はそこそこ頑張ったが惜負だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年は100敗だな」の声
無言で帰り始める選手達の中、昨年も不細工近藤は独りベンチで泣いていた
大谷で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今のハムで得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」近藤は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、近藤ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」近藤は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、近藤はふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出した内川が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように日本ハムの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする近藤の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「近藤、キャッチボールだ、早く行くぞ」声の方に振り返った近藤は目を疑った
「お・・・大谷?」 「なんだ不細工、居眠りでもしてたのか?」
「暴行で捕まった中田さん?」 「なんだ近藤、かってに中田を犯罪者扱いしやがって」
「大野さん・・・」 近藤は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:陽岱鋼 2番:西川 3番:田中 4番:中田 5番:近藤 6番:谷口 7番:大野 8番:中島 9番:大谷
暫時、唖然としていた近藤だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
杉谷からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走する近藤、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなっている内川が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った