れんげ「なっつんがイモムシになったん」
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夏海「れんちょん、見てなよ。ライターのガスをこうやって握り拳のなかに溜めてね…」シュゥゥゥ
れんげ「なんなのん?」
夏海「そしたら点火しまーす♪」シュボ
ボウッ!
れんげ「す、すごいのん!なっつん魔法使いみたいなのん!」
夏海「えっへっへ…面白いっしょ?れんちょんもやってみる?」
れんげ「あ、危なそうだからウチはいいのん…」
夏海「大丈夫だって。火傷なんかしないからさ」
れんげ「あ、熱くないのん…?」 雪子「こらっ!あんたはまたそんな危ない事してっ!」
夏海「げっ…母ちゃん…なんだよぅ、なんも危なくねえって」
雪子「れんげちゃんに変な事教えないの!あんたがバカな事すると小さい子も真似するでしょうが!」
夏海「ちぇ…うっさいなぁ…」
雪子「そうやってあんたは人の話を聞かないで…」
雪子「いい?あんたがいらん事して大怪我するのは勝手だけど、れんげちゃんに火傷でもさせたら母さん許さんからね」
夏海「へいへい。わっかりましたよ~っと」
雪子「はぁ…とにかくライターは出しんさい。それ父ちゃんのでしょうが」
夏海「わかったってば!ほらこれでいいんでしょ!いこっ、れんちょん」グイッ
れんげ「あっ…」 夏海「まったく母ちゃんはウチがやること為すこといちいち口出してくるんだもん。やんなっちゃうよね」
れんげ「…なっつん、おばちゃんの言う事はもう少しちゃんと聞いた方がいいと思うのん」
夏海「れんちょんまでそんな事…あ、父ちゃんの軽トラ停まってる…そういや今日は畑出るって言ってたもんなぁ」
夏海「そうだれんちょん、外いるのも寒いし車の中で暖房かけてラジオでも聞こうか」
れんげ「ぐっどあいでぃあなのん」
夏海(田舎の車は無施錠、キー挿しっぱがあたり前♪)カチ…ブオオン
夏海「はぁ~あったけ~」
れんげ「ラジオ!ラジオ聞くのん!」
夏海「おっけ~」カチャ
チャラララーチャララーラララー♪
れんげ「グレートマンのテーマなのん!」ワクワク れんげ「ぐれーとにぃー♪たちあがりぃー♪」ノリノリ
夏海(はぁ…退屈……)
れんげ「ぐれーとにぃー♪あくをうつぅー♪」
夏海「お、またライター発見」
れんげ「はっ!?」
れんげ「なっつん!それもうやめるん!」
夏海「だから危なくないんだってば。心配性だなぁれんちょんは」シュゥゥゥ
れんげ「おばちゃんに叱られるん…」
夏海「へーきへーき」シュボ…ボウッ! れんげ「ウチ、それ嫌い。悪い予感がするのん」
夏海「~♪」
れんげ「……今日はもう帰るん」ガチャ…バタン!
夏海「あ!ちょっとれんちょーん!」
夏海「はぁ…ほんと田舎ってつまんねー…いいじゃんか、これくらいの暇潰し…」
シュゥゥゥ…シュボ…ボウッ!
シュゥゥゥ…シュボ…ボウッ!
シュゥゥゥ…シュボ…ボウッ!
シュゥゥゥゥゥゥゥゥ…… 本日午後2時頃、○○県○○村××の農道に停車されていた軽トラックの車内で爆発事故があり
車内にいた同村の中学一年の女子生徒が全身に重度の火傷を負いました。
○○署の調べでは軽トラックの所有者は女子生徒の父親であり、爆発直前に分かれた友人の証言によると
女子生徒は握り拳のなかにライターのガスを充満させて掌のうえで点火する遊びを繰り返していた、とのことで
同署は車内に充満したガスにライターの火が引火した疑いが強いとして、調べを進めています。
また、重症を負った女子生徒ですが、現場近辺には高度な治療を行える医療施設がなく
およそ40km離れた○○市内の総合病院に搬送されましたが、事故発生から搬入までにかなりの時間が掛かってしまったこともあり
容態についてはいまだ予断を許されない状態だ、とのことです。 雪子「夏海ぃ…うううっ…夏海ぃぃ…」ポロポロ
小鞠「お、お母さん…大丈夫だよ。あの夏海のことだもん。そう簡単に…」
卓「……」
『手術中』のランプが消える
雪子「先生!娘は!?夏海は…!?」
医師「……」
医師「…とても生命力の強い娘さんですね」
雪子「それじゃ夏海は…!」
医師「なんとか一命はとりとめました。呼吸も安定しています。じきに意識も戻るでしょう」
雪子「あああ!夏海ぃ…!」ヘタリ
小鞠「よかった…よかったよぉ…びえええん!びえええん!」
卓「……」 雪子「先生…ありがとうございます…ありがとうございます……!」
医師「…お母さん、どうかお心をしっかり持ってください」
雪子「…はい?」
バタン…
キィ…キィ…ガラガラガラ……
小鞠「夏海っ!あんたはもう…心配ばっかりかけてっ」タタタ…
小鞠「ひいっ!?」ビクッ
卓「…!?」 雪子「夏海…よかった…!」ヨロヨロ
雪子「母さんもう、うるさいこと言わないから…あんたが無事だっただけでもう……」
夏海「……」シュコー…シュコー…
雪子「いっ…」
雪子「いやああああああああっ!!!」 二ヶ月後
れんげ「なっつん、もう会っても大丈夫になったんな!」
一穂「…うん。ちゃんとお話もできるようになったみたい」
れんげ「ずっとなっつんと遊べなくて寂しかったん」
れんげ「それにこの前ウチ、勝手に帰っちゃったからちゃんとゴメンなさいしたいのん」
一穂「そっか…」
れんげ「仲直りになっつんの好きなお菓子いっぱい買ってきたん!」
れんげ「なっつんのお見舞いって言ったら駄菓子屋がたくさんおまけしてくれたのん」 一穂「……」
れんげ「はっ!ウチったら…病院ではお口にチャック、するのんな?」
一穂「……れんちょん」
一穂「本当の友達っていうのはね、例え相手がどんな姿に変わっても仲良くできるものなんだよ」
れんげ「…ねえねえ、何言ってるのん?」
一穂「…あの子と変わらず接してあげてね」
れんげ「?」 夏海「…だから自分で出来るって言ってんじゃん!」
雪子「無茶いわんの。その身体でどうやって…」
夏海「……」
雪子「…ご、ごめんなさい。じゃあひとまずやってみようか。それでダメだったら母さん手を貸すから」
夏海「必要ない…もう帰れよ…」
雪子「ダメよ…あんたがベッドから落ちそうになったら、母さん絶対受け止めるんだから…」
夏海「そういうのやめてよ…うざいんだよおっ…!」
夏海「ああああああああああああああっ!!」バタバタ 雪子「お、落ち着きなさい夏海…他の病室の人がびっくりするでしょうが」
夏海「ははっ…そっか。そりゃ困るよねぇ…母ちゃ…あんたが心配なのは結局そういうことなんだよ…」
雪子「…どういう意味よ」
夏海「いろんな人が見に来たら恥ずかしいよねぇ?イモムシみたいな娘の姿…あはははは!」
ぱちぃん!
夏海「」
雪子「う、ううっ…なんで…あんたはっ…」
夏海「…おいおい、障害者虐待かよ。サイテーだな」
雪子「違うっ!あんたは障害者なんかじゃない…障害者なんかじゃない…!」ギュ
雪子「夏海は夏海のまま…元気で可愛い女の子のまま…なにも変わってないもの…!」ギュウウ 夏海「……」
夏海「…さすがに無理があんでしょそれは」
雪子「お願い…そうやってすぐ卑屈になるのやめてちょうだい。母さんそんな夏海見てるのすごく悲しい」
夏海「…もういい。寝る」ゴロッ
雪子「寝るって…さっきお昼食べたばかりじゃない」
夏海「起きてたところでなにが出来るっていうのさ…こんな身体で…」
雪子「夏海…」 >>15
一期の頃に投稿されたSSや
元ネタはイモムシ雄太とかいうDQN 雪子「…起きてなきゃいかんよ。一時にれんげちゃん達お見舞いにきてくれるんだかんね」
夏海「はあっ!?なんだよそれ…聞いてないしっ!」
雪子「そうやってブーたれてたら、れんげちゃんに笑われるねぇ」
夏海「…なんでだよっ!誰にも会わないって言ったじゃん!」
雪子「そうやって自分の殻に閉じこもるの、よくないって先生も言ってたよ」
夏海「なんで…そんな勝手な事すんのさぁ…」ポロポロ
雪子「ごめん…でもこのままだと絶対いけないと思ったから…」
夏海「いけないって何がだよ…」ポロポロ
雪子「あんたはいいん?このまま誰とも会わないなんて…」
夏海「いいも悪いもないじゃん…ウチの人生なんて、もう終わってんだし…」
雪子「そんな事ない…大丈夫だから…」 夏海「何が大丈夫なのさっ!見なよこの身体っ!顔の火傷も!焼け残った髪の毛も!」
雪子「……」
夏海「こんな酷い姿…友達に見せられるわけない……!」
雪子「わかるよ…夏海だって女の子だもん…辛いよね…」
夏海「そう思うならウチを誰の目にも触れさせないようにしてよ!」
雪子「いい、聞きなさい夏海。初めのうちは辛いかもしれんけど…」
夏海「うるさいなぁ!れんちょん達来ちゃうじゃん!はやく屋上にでも連れてってよっ!」
雪子「…ダメ。ここにいなさい」
夏海「連れてけええええええ!!!」バタバタ 雪子「お願いよ夏海!自棄にならんでよ…辛いの、苦しいの、みんな母さんにぶつけていいから…」ギュ
夏海「はぁ…はあっ…」ポロポロ
夏海「…ろし…やる…」ポロポロ
雪子「ん?どうしたの、夏海…」
コ ロ シ テ ヤ ル……!
雪子「……」
雪子「…夏海、あんたは強い子ねぇ」
夏海「…は?」
雪子「そんなに力強く母さんの事にらみ付けられるなら、もう心配いらんねぇ」
夏海「…っ!」
夏海「あああああああああああああああっ!!!」 看護師「越谷さんでしたら74号室…」
あああああああああああああああっ!!!
れんげ「なっつん?」
れんげ「なっつんの声がしたん」タタタ…
一穂「あ!待ちなさ……」
れんげ「なっつんどーしたん!まだ火傷が痛むん!?」キキーッ
夏海「あ…」
雪子「れんげちゃん…」
れんげ「……」 夏海「あ…あ…」
れんげ「……」
夏海「あはははっ!見てよれんちょん!このみっともない姿!」
夏海「いやぁ、さすがのウチもこうなっては手も足も出ない!あ、もとから出ないか!なーんちゃって!」
夏海「あははは…は…」
れんげ「……」
れんげ「あの…ウチ、病室を間違えたみたい…」
夏海「」 一穂「なーに言ってるの。なっつんだよー」
れんげ「ねえねえ…」
れんげ「本当に…なっつんなん…?」
夏海「あ、あは…イメチェンにしてはやり過ぎたかなー、なんて…」
雪子「……」
一穂「ほぉら、もっと傍に行ってお話したらいいじゃない」
れんげ「こ、ここでいいん!」ビクッ
夏海「…っ!」 れんげ「あの…なっつん…その…」ビクビク
一穂「……」
雪子「……」
れんげ「え…ええっと…」
夏海「あ、あのさっ…れんちょん…」
れんげ「う、ウチもう帰るん!」タタタ…
一穂「あぁ!あの子ったら…ごめんなさい!すぐに連れて戻るから」ペコ 一穂「こぉら、勝手に出てったらダメでしょーが」
れんげ「うっ…ぐすん…」
一穂「…まぁ、なにも教えてなかったねえねえも悪かったよねぇ。びっくりしちゃうのも仕方ないか」
れんげ「あんなのなっつんじゃないん…」
一穂「……あの事故で夏海が負った火傷は深刻でね、感染症を起こすといけないから手と足は切断するしかなかったんだって」
れんげ「そんな恐い話聞きたくないのん!」
一穂「あぁ…ごめんごめん。でもねれんちょん、さっき会ったのは間違いなくなっつんなんだよ?」
一穂「いつもれんちょんと遊んでくれて、れんちょんが大好きなあのなっつんなの」
一穂「ね、戻って一緒にお話ししてあげよう?」 れんげ「……」
れんげ「ごめんなさい…ウチ、やっぱり行きたくないん…すごく…恐かったん…」
一穂「…そっか」
れんげ「ウチ、ひどい子なんな…」うるっ
一穂「そんな事ないよー。れんちょんは夏海の事が大好きだからそんなに悲しんでるんだもんね」ナデナデ
れんげ「ううっ…ぐすっ…ぐすん…」
一穂「それじゃあもう少しここで待っててね。ねえねえはおばちゃんとお話してくるから」
れんげ「ごめんなさい…ごめんなさい…」ポロポロ
一穂(さすがに受け入れられなかったか…)
れんげ「ねえねえ、これ…」
一穂「ん?」
れんげ「お菓子、なっつんに渡してあげて欲しいのん」
一穂「…はいよ。なっつんも喜ぶよ、きっと」 一穂「ごめんね雪子さん。れんげだったら偏見とか持たずに今まで通り接していけるかと思ったんだけど…」
雪子「ううん…ええんよかずちゃん。こっちこそあんな小さい子にショックな思いさせて悪かったねぇ」
一穂「…夏海はどうしてる?」
雪子「うん…すっかり落ち込んでしまって…うっ…うううっ…」
一穂「本当にごめんなさい…ウチが浅はかだったんよ…」
雪子「ちがう…責めてるわけじゃないんよ…ただあの子、れんげちゃんの前では普段通り振る舞おうとして…」ポロポロ
雪子「きっとあの子なりに…妹分の前ではしっかりしないとっていうのがあったんよねぇ…」ポロポロ 一穂「……」
雪子「かずちゃん、無理な事頼めないのはわかってる…だけど、いま夏海の心を開くことが出来るのは母親の私じゃなくて友達の存在だと思うから…」
一穂「…うん。わかってる」
雪子「もうすぐあの子も退院だから、また家に遊びに来てくれると嬉しいんだけど…」
一穂「大丈夫だよ雪子さん。時間はかかるかもしれないけど、れんげならきっと全部受け入れて夏海と付き合っていける」
一穂「だって夏海はあの子の一番の親友なんだもん…」 キーンコーンカーンコーン♪
一穂「はい今日も一日お疲れ様。みんな気をつけて帰ってくださーい」
蛍「そうですか。夏海先輩やっと退院できたんですね!」
小鞠「うん。みんなには心配かけちゃったけどね。ひとまずは落ち着いた感じかな」
蛍「よかったぁ…夏海先輩、学校にはいつ頃復帰できそうなんですか?」
小鞠「う、うん…どうだろ…もう少し様子をみて、かな…」
蛍「でしたら今度先輩のお家にお見舞いに行ってもいいですか?」 小鞠「もちろん!今度と言わず今日これからでも来てくれたらいいよ」
蛍「はい!」
蛍「あっ…ごめんなさい。今日は街に出るからママが早く帰ってきなさいって…」
小鞠「あ、あぁ…そう、なんだ…」シュン
蛍「あっ、あのっ!本当なんです…!言い訳とかじゃなくてその…」アセアセ
小鞠「うん、分かってるよ。蛍がそんな嘘つくわけないもんね」にこっ
小鞠「こっちこそゴメンね。蛍の都合も聞かずに勝手に決めちゃって」
蛍「…今度、必ずうかがいますから。お先に失礼します」ペコリ れんげ「……」
小鞠「あ、そうだ。れんげはどうせ暇でしょ?」
れんげ「はうっ!」ビクッ
小鞠「帰り寄ってきなよ」
れんげ「う、ウチ裏山で遊んでくん!」ガタッ!タタタ…
小鞠「あ……」
卓「……」
小鞠「はぁ……」 小鞠「……」トボトボ
小鞠(ダメダメ、暗い顔してちゃ!)ペチペチ
小鞠「ただいまあーっ♪」ガラッ
シ──ン…
小鞠「…夏海、入るよ?」コンコン
夏海「……」
小鞠「なんだ、起きてるならお帰りくらい言ってよ。お母さんは?」
夏海「…コープ」
小鞠「そっか。今日はなにしてたの?」
夏海「別に…ずっとテレビ見てた…」ゴロン 小鞠「へぇ~、何か面白いのやってた?」
夏海「…ぜんぜん」
小鞠「で、でもいいよねぇ夏海!部屋に自分用のテレビ置いてもらえてさ!羨ましいよ」
夏海「……はぁ」
夏海「ウチは自由に動かせる手足の方が羨ましいよ」
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