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「ガイジンに王の記録を破らせるな」―シーズン55号本塁打の聖域をめぐる“負の歴史”<SLUGGER>
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2022/09/25(日) 17:36:41.07ID:Ny0BrMNP0
 9月13日に55号本塁打を放って以来、村上宗隆(ヤクルト)は足踏みが続いている。“球界最強打者”を各球団が徹底的にマークしている結果だが、「56」の壁をなかなか超えられない光景には、どこか既視感がある。少なくとも2013年にウラディミール・バレンティン(ヤクルト)が乗り越えるまでの間、確かにそこには“聖域”が存在していた。

【動画】史上5人目の55号……“村神様”が“世界の王”に並ぶ一発!

 王貞治が55本塁打のシーズン最多記録を樹立したのは、1964年のことだ。前年に野村克也が樹立した52本塁打をたった1年で塗り替えたこの数字は、その後49年にわたって歴代1位にとどまり続けた。

 だがその間、更新のチャンスがまったくなかったわけではない。まず85年、ランディ・バース(阪神)がこの記録に迫った。10月20日の中日戦で54号を放ったバースは、この時点でまだ2試合を残していた。

 だが、バースにとっての不運は、その2試合の相手が、他ならぬ王が監督を務める巨人だったことだ。1試合目の先発・江川卓だけは真っ向勝負を挑んだが、他の巨人投手陣は王の記録を守るため、バースとの勝負を徹底的に避けた。

 当時、巨人に在籍していた助っ人投手キース・カムストックが後に著書で明かしたところによると、「バースにストライクを投げたら、1球につき罰金1000ドルを科せられていた」と言う。2試合で5四球と徹底的に勝負を避けられたバースは、結局54本塁打に終わり、タイ記録達成すらならなかった。

 それから16年後、次に記録に迫ったのが近鉄のタフィ・ローズだ。10月12日、シーズン128試合目(当時は140試合制)で54号を放ったローズは、24日に55号を放ってついに王の記録に並ぶ。この時点で、シーズンはまだ5試合残っており、新記録達成は間違いなしと思われた。

 だが、ローズはそこから足踏みしてしまう。次の試合では4打数でシングルヒット1本、29日の137試合目では、四球と死球が1個ずつの一方で無安打に終わった。
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2022/09/25(日) 17:37:12.77ID:Ny0BrMNP0
 迎えた138試合目は、ダイエー(現ソフトバンク)戦。この時、ダイエーの指揮を執っていたのも王だった。先発の田之上慶三郎は、第1、第2打席は連続四球。その後の打席でもストライクゾーンには頑なに投げず、結局この日、全18球でストライクは2球だけ。ローズが無理矢理ボール球を打って凡退する場面もあった。

 しかも、ダイエーの若菜嘉晴バッテリーコーチは「外国人に抜かれるのは嫌だ。王さんは記録に残らなければならない人」と、人種差別とも取られかねない理由で意図的に勝負を避けたことを明言する始末。これを受け、川島廣守コミッショナー(当時)から「(ボール攻めは)好ましくない」と異例の通達が出されたことで、その後は勝負を避けられることはなくなったが、ローズは残り2試合とも本塁打を打てず。新記録は幻に終わった。

 そして翌01年、今度はアレックス・カブレラ(西武)が記録に挑んだ。カブレラが55号を放ったのも、ローズと同じ135試合目だった。そしてその直後、カブレラも王監督率いるダイエーと対戦し、やはり徹底的なボール攻めに遭った。5打席で3四死球。カブレラは試合後、「彼らはプロじゃない」と怒りを露わにした。ダイエーとの対戦はこの1試合だけだったが、これでバッティングを狂わされたのか、カブレラは残り4試合でも快音が出ずに、ローズと同様に55本のタイ記録で終わった。

 バース、ローズ、カブレラはの3人はすべて外国人選手だったことは決して偶然ではない。当時は「王の記録をガイジンに破らせるな」という意識がそれほど強かったのだ。だが、なりふり構わぬボール攻めが、結果として王の記録に泥を塗った面は否めない。たとえ記録が更新されようとも、王の偉大さが損なわれることはない――球界がそれを自覚するのは、13年のバレンティンまで待たねばならなかった。

 バレンティンの本塁打量産ペースは圧倒的で、9月11日の広島戦で55号に到達。この時点でまだ22試合も残っていた。その後3試合は一発が出なかったが、四球は2つのみ。安打も2本放っており、露骨に勝負を避けられるようなことはなかった。

 9月15日、本拠地神宮での阪神戦で、バレンティンは第1打席で56号、第2打席で57号を放って一気に王を抜き去った。もはや些細な妨害で記録更新を防げるような領域ではなかったということだろう。世間も記録更新を祝福する声が圧倒的で、王の記録を過剰に神聖視する風潮もほとんどなかった。

 今季の村上も、誰もが祝福する中で56号に迫っている。だが、輝かしい本塁打記録の裏に、かつては負の歴史があったことも忘れてはいけない。

文●筒居一孝(SLUGGER編集部)
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