東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で、東京地裁は6日、贈賄罪で起訴された出版大手「KADOKAWA」の前会長・角川歴彦(つぐひこ)被告(79)について、5日に請求があった保釈を認めない決定を出した。証拠隠滅や逃亡を疑う相当な理由があると判断したとみられる。

 一方で地裁は、KADOKAWA元専務の芳原世幸(としゆき)被告(64)については6日、保釈を許可する決定を出した。保釈保証金は1200万円。

 角川前会長は起訴された4日にコメントを発表。会長辞任を表明し、「汚職に関与したことは一切ない。裁判で無実であることを明らかにしていきたい」と説明していた。KADOKAWAは5日の取締役会で辞任を承認した。

 芳原元専務と元五輪担当室長・馬庭教二(63)の両被告は、角川前会長に先立って逮捕され、9月27日に贈賄罪で起訴された。馬庭元室長はすぐに保釈を請求して認められ、保釈金700万円を納付して29日に保釈された。芳原元専務は角川前会長と同じ5日になって保釈を請求していた。

 特捜部の発表などによると、角川前会長と芳原元専務、馬庭元室長は2016~18年、大会組織委員会の元理事・高橋治之容疑者(78)=受託収賄罪で起訴、再逮捕=に対し、スポンサーに選定するとともに、協賛金を3億8千万円以内に抑え、契約手続きを迅速に進めてほしいと依頼した。

 そのうえで、高橋元理事の知人の深見和政容疑者(73)=同=が経営するコンサルタント会社「コモンズ2」とコンサル契約を結び、19年9月~21年1月に9回で計約6900万円の賄賂を送金したとされる。

 高橋元理事は計約7600万円の受託収賄罪で起訴されたが、KADOKAWA側は贈賄罪の公訴時効(3年)を踏まえ、1回目の19年7月の約700万円の送金は除かれた。


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