巨人・小林誠司捕手(33)が16日、G球場で行われた秋季練習で大久保博元打撃チーフコーチ(55)から熱血指導を受け、いきなり“一発回答”した。新任コーチは通算打率2割8厘の根本的な原因を精神的な萎縮と指摘した上で、打つポイントを前に置いて大きく振るようにアドバイス。潜在能力は、西武打撃コーチ時代の教え子で2008年に最多安打のタイトルを獲得した片岡易之(現在は保幸)氏(39)より上と評し、変身すれば「2割5分は打ちます」と太鼓判を押した。

 まるで長距離砲のような大きな放物線だった。昼前のフリー打撃。小林がフルスイングで放った打球は高く舞い上がり、そのまま左翼フェンス後方の防球ネットにぶち当たった。ケージ裏で見守っていた大久保打撃チーフコーチは納得の表情でうなずく。隣にいた阿部ヘッド兼バッテリーコーチも、亀井打撃コーチも、明らかな変化を感じ取った様子だった。

 その直前に行われた“熱血デーブ塾”の成果だった。まず指摘したのは精神的な部分。通算打率2割8厘の根本的な原因は「打てないって言われている人はフライを上げれば怒られる。引っ張ると怒られるという。大きく打つことが罪になってくるから。どんどん動きが小さく小さくなってくるからポイントもどんどん差し込まれる」と分析した。

 この日は「まずポイントを前にしよう」とアドバイスした。「体重を乗せて前にいきましょうって。例えばデコピンも親指を付けるから痛い。この動きはひねりを入れるか、前傾するかってこと。だから(体重移動する時に力を伝えるため)前傾してみたら?って」。西武のコーチに就任した08年にも、前年7本塁打と潜在能力を発揮できていなかった中村に“デコピン打法”を伝授。46本塁打で初のキングへと導いた。

 同じ打撃理論を小林にぶつけ、直後のサク越えを見て確信した。「俺、感覚を戻せばあいつ打てると思ってるよ。片岡を預かった時より、あいつの方が上ですよ。タイミングの取り方とか間が」。08年に167安打で最多安打を獲得し、昨年まで巨人の2軍内野守備走塁コーチを務めた片岡氏より「上」と断言した。

 さらに期待の“デーブ節”は続く。「2割5分は打ちますよ。で、あの肩で一人刺してくれりゃ1個1安打みたいなもん。足して3割みたいな」。チーム合流2日目。巨人時代に背番号22だった大久保コーチは「共通点は(背番号)22をつけたのはイケメンかな」とノリノリで、“後輩”の指導に最も多くの時間を割いた。

 小林は今季60試合の出場で打率1割4分8厘、0本塁打、5打点。2年連続2ケタ本塁打の大城に正捕手を譲り、ベンチを温める日々が続いた。2安打1打点と結果を出した前日15日の紅白戦後には「もう振るしかない。練習するしかない」と悲壮な覚悟を口にしていた。来年6月で34歳を迎えるが、まだ変われる。まだ成長できる。(中野 雄太)