朝市急襲「犯人」はトビ 1万円アワビも被害 コロナで観光客減影響か
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輪島の観光名所といえば「朝市」。新鮮な海産物や野菜が並ぶ露店からおばちゃんたちの元気な声が響く。無類の魚好きで着任を喜んだのは3カ月余り前、それから何度も通った。「看板娘」たちに話を聞くと、近ごろトビによる被害が目立っているらしい。しかも食べ歩きの観光客ではなく、陳列品が狙われているとか。1個1万円のアワビも取られるまでになった背景にはコロナ禍があった。

 10月31日午前7時ごろ、開店準備を終えたばかりの時間帯がトビに襲われやすいと聞き、足を運んだ。通りを見渡してみると、確かに近くの電線や建物の屋根に止まって獲物を狙っている。

 旬の魚について話しているとすぐ横の露店に影が落ちた。「バサッ」。周囲の「危ない」という声もむなしく、高級魚「ノドグロ」はあっという間にかすめ取られてしまった。

 露店を構えて40年以上の関山俊昭さん(72)は8~10月に蒸しアワビ5個(販売価格約7万円)を奪われた。「アワビを取られたのは今年が初めて。特に大きいものがやられる。気付かないこともあるから、涙も出んわ」と肩を落とす。

 朝市組合の関係者によると、これまでは通りで買った地元の菓子「えがらまんじゅう」や、コロッケを持って食べ歩く観光客が被害に遭うことはあった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で客足が大きく減った2020年春ごろから、露店の一夜干しなど海産物が取られるケースが目立つようになったという。

 トビは「油揚げ」でなくてもいいのか。いしかわ動物園(能美市)に聞くと、観光客が減って餌を奪えなくなった個体が露店を狙い始めた可能性があるという。ただ、担当者は「人が常にいる場所に来るのは珍しい」と話す。

 トビの生態に詳しい北陸鳥類調査研究所(小松市)の今森達也代表(54)に朝市の状況を説明すると「栄養価が高いアワビを奪うことに成功して味を占めたのではないか。今後も繰り返す可能性がある」と返ってきた。