0001それでも動く名無し
2022/11/13(日) 22:51:28.87ID:sO0WGPyh0投手リレーにより2点に抑え、打線も勢いを見せて大勝だった
スタジアムに響くファンの歓声、どこからか聞こえる「お疲れ様」の声
勝つ喜びを感じて帰り始める選手達の中、かつての首位打者内川は独りベンチで泣いていた
WBCで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それをかつての横浜で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「あの時の腐った環境は無くなったんだ・・・」内川は嬉し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、内川ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」内川は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、内川はふと気付いた
「あれ・・・?まだお客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出した内川が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにスワローズの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする内川の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「内川、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った内川は目を疑った
「さ・・・坂口さん?」 「なんだ内川、居眠りでもしてたのか?」
「く・・・工藤監督?」 「なんだ内川、かってに工藤さんを引退させやがって」
「杉村コーチ・・・」 内川は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:塩見 2番:坂口 3番:山田 4番:村上 5番:内川 6番:キブレハン 7番:中村 8番:長岡 9番:小川
暫時、唖然としていた内川だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「やれる・・・やれるんだ!」
嶋からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走する内川、その目に光る涙は悲しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなっている内川が発見され、吉村は病院内で静かに息を引き取り、村田は原監督に責任をとらされる形でまたバッドエンドを迎えた