K-POP全般に存在する深刻な人種差別は、海外ファンの間でよく知られている事実だ。黒人のルックスや韓国で働く東南アジア出身の労働者の話し方が「コメディのモチーフ」となってきたことを見ても、韓国社会が文化の多様性にいかに鈍感であるか分かるだろう。

 このような社会の雰囲気は、K-POPシーンにもそのまま表れている。「ブレードヘア」のように、黒人の外見的な特性のみを真似する傾向が幅を利かせ、抑圧された環境に声を上げるヒップホップ精神は、韓国では高価な時計や車、女性をひけらかすことに変容してしまった。黒人英語を芸のネタにしてテレビで見せるアイドルも多い。マイノリティ・カルチャーの特性を社会的・文化的な意味を理解しないまま利用するK-POPシーンを、海外のファンは非難する。時にはひどい発言をすることもある。とあるK-POPグループのメンバーがファンを対象にしたライブ配信で、黒いリップクリームを塗ったメンバーを見て「クンタ・キンテみたい」(注1)と笑ったシーンは、海外ファンの怒りを誘った。アフリカ人の奴隷の歴史について理解が足らず、思慮に欠ける行動だった。

 初期のBTSも同じようなところがあった。RMがメディアで黒人英語が「個人技」だといったり、ヒップホップアイドルを標榜するグループらしく黒人風のスタイルで差別化を図ろうとしたりしていたのだ。『Amino』や『Reddit』のような海外のファンコミュニティでは、BTSを含むK-POPシーンの人種差別が繰り返し議論されていた。そんななか、BTSはこのような批判に耳を傾け、同じ過ちを繰り返さないように努めた。黒人を卑下する「Nワード」と似たような発音の韓国語の歌詞を、似たような発音の別の単語に修正したのが、代表的な例だ。おそらく、ファンダムがグローバル化するなかで、ファンダムの文化的多様性をどのように見つめ尊重すべきか、BTSや所属事務所で話し合ったのだろう。

https://bunshun.jp/articles/-/45874