彡(゚)(゚)「今日は…やきうが…」
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「ファッ!?スレッドトラップ!?」
「なんやこのワナイダーとかいう新ポケモン強すぎやろ…」
「アカン…勝てんくなってきた…」
「ちょっとやめるか…ずっとやっとったしな…もう一週間か…?」
ワイは一人の部屋でぶつぶつひとりごとを唱え、スマホを探した。
「あーあったあった、こんな触らんくても充電まだ残っとるもんやな」
電源を入れると、彼氏から大量の通知が残っていた。 『見たら連絡して』
『不在着信』
『不在着信』
『ワイくん生きてる?』
『未読無視はアカンすよ』
『(つば九郎が怒ってるスタンプ)』
『不在着信』
『(つば九郎が泣いてるスタンプ)』
『不在着信』
『不在着信』
『普通に心配なんだけど』
『不在着信』
『おーい』
『おーい』
『ワイくん』
『おーい』
『不在着信』
『不在着信』
『音信不通はアカンすよ』
『不在着信』 「アカン…完全にムネのこと忘れとった…」
先週のポケモン最新作の発売日から、ワイはずっと自分の家に引きこもっていた。
仕事だけは適当にテレワークで済ませ、あとは食べる浴びる寝るの最低限の行為以外は
ずっとSwitchを繋げたテレビに向かっていてスマホもろくに触っていなかった。
「絶対怒っとるよな…電話せな…」
ムネには少し忙しくなるとは伝えていたが、
その頃の想定よりも実際のゲームが面白かったためこんな状態になってしまった。
ワイはムネからの不在着信のところをタップした。 プルルル…ガチャ
「あ、ムネか?ほんますまん、ワイすっかり…」
「えいやー」
「ファッ!?」
電話の先はムネとは違う声だった。
「ムネ…やない?間違えた?いや…どなたさんですか?」
「ムネのスマホ確定な」
「えっ確定って…坂本さん?」
「そうでーすスマホ置いてったやつが悪いでーす」
「え、今一緒のとこにいるんですか?」 「今日表彰式確定な」
「あっ…」
そういえばそうだ、今日は表彰式だ。
カレンダーや手帳もすっかり見ていなかった。
「写真撮るなら撮るで早いほうがいいやろって言って行っちゃった」
「ムネは写真撮影に行ってスマホを控室に忘れたってことっすね」
「調子乗りすぎたな」
「というか坂本さんは何で表彰されるんですか?今年は何も…」
「流行語大賞確定な」
「ああ、そういうことですか…」
そんな部門の表彰があっただろうかということは敢えて尋ねなかった。
「終わった頃にまたかけるって、ムネに伝えておいてください、それじゃ」
「えいやー」
ワイは通話を切った。 表彰式の後。
緑色の車が豪華なホテルの駐車場から出てくる。
ワイはライトをつけたスマホを振って自分の位置を知らせる。
緑色の車の運転手はワイに気づき、車を寄せてくる。
停車したのち運転席からムネが出てきた。
「まいど!ワイちゃんやで」
「…」
わざとらしくおどけた挨拶をしてみても、ムネはクスリともしない。
「連絡するって言うたけど、やっぱ会いたくて」
「…」
「…」
ワイもつられて黙ってしまう。
「…早く乗って」
急かされてワイは助手席に乗った。 夜の東京の道を走る。
「なあ、ほんまごめんな」
「別にいいよ、どうせポケモンだろうと思ってたし」
「LINEも見てなくて…」
「そりゃ心配にはなったけどさ…」
「マジでごめん、許してや…」
「わかった、でももうやめてな、寂しいから」
「うん…」
ムネはいつも素直にワイに気持ちを伝えてくれる。
内気でめんどくさがりで気まぐれなワイとは大違いだ。 「なあ…ワイ…何したら…」
「何って?」
「いやその、今回のお詫びというか…」
ワイからムネほどの男に渡してあげられるものなんてほとんど無い。
ベッドの上で言いなりになるくらい…いや、今そんなことを言っても仕方がない。
「そういうのはいいから」
「えっ」
「俺らお互い好きで付き合ってるんだし、そういう、埋め合わせなきゃみたいな、違うと思う」
「ムネ…」
「俺はワイくんがいればそれでいい、だからいなくならないで」
「うん…分かったで」
「あ、でもやっぱり」
「なんやなんや」
「つぎの信号待ちでキスさせて」 「あ…あぶないで、ええけど」
「いいから、やる」
「ほな、それまで手繋ご」
ワイは運転席の方に片手を伸ばす。
ムネも片手を伸ばし、指を絡ませる。
「これ好きだよね」
「うん、やっぱムネの手触ってると落ち着くんや」
「なんそれ」
目の前の信号が赤になり、車が止まった。
ムネがこっちを向いて、やっと目が合った。
ワイの方に傾いてくる。
「あっ…せや、ムネ…忘れてた…」
「何?」
「おめでとう、MVP」
「ばか」
誰も見ていない車の中で二人の唇が重なった。
END さかまとってもうその喋り方しかできんくなったんやな… ♪
https://www.youtube.com/watch?v=xXHfd_ReCQE
抱きしめたいと言う言葉の意味とは裏腹に
不安や寂しさを君に押しつけようとしてたんだ
ここに来る途中に君の好きな桃を選びながら
救われることしか頭になかった最低な僕
君のようになりたいはずなのに
駆け引きのない気持ちをいつもくれる君のように
高い場所に実を付けた桃に手が届くように
君を抱き上げることさえ思いつきもしなかった
高い場所に実を付けた桃に手が届かない君に
気付かないような僕の手は柔らかいものを潰してしまう
~槙原敬之『桃』 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています