0001それでも動く名無し
2022/12/02(金) 03:19:40.88ID:UrEJAiwK0別人かと見紛うほどの甘い雰囲気をまとった姿は、本来なら真っ先に怪しむべきなのに、疑念は愛によって全て溶かされてしまう。
もうなんだっていい。愛される以上に気持ち良いことなんてない。
「監督っ…」
「ちゃうやろ? ほら、名前呼んで」
まろやかな声で諭され、熱情が腰を刺激した。甘美な快楽がすぐそこに迫っている。
もう待ちきれないと、自分でも分かるほどの上擦った声が出て、愛しい名前を口にした。
「キスするか?」
「はい…」
これから長い夜になると期待して、目を閉じた。
「……あ」次に見たのは見慣れた天井だった。夢だった、そう気づいてから深いため息をつく。
重たい瞼をうっすらと開き、時刻を確認すると、画面には信じられない数字とおびただしい数の着信履歴が映っている。
大遅刻確定だ。余韻に浸る暇はなく、ベッドから飛び起きた。