0001それでも動く名無し
2022/12/03(土) 03:22:34.53ID:q0yh3uqH0鮮やかな緑色で彩られた世界が広がっている。木々から差し込む柔らかな光、遠くで聞こえる鳥のさえずり、葉を揺らす爽やかな風。
まるで童話の世界にいるような景色の中を進んでいくと、大きな樹木の下で昏々と眠る男の姿を見つけた。
「おい、起きろ」
肩を何度か叩くも反応はない。揺すったり大声で呼びかけてみたが、眉根を寄せることすらなく涼しい顔をしたままでいる。
──キスで目を覚ますなんてロマンチックですよね。
ふと、以前彼が口にした言葉が先生の脳裏に浮かんだ。まさかと思ったが、これもまた言霊の導きなのだと納得し、受け入れることにした。
「眠り姫、ちょっと時間大丈夫ですか?」
優しく語りかけながら身をかがめると、彼の顔に影が落ちる。
顔を近づけ、目を閉じて唇を触れ合わせた。柔らかな感触を味わって、離す。
どんな風に目を覚ますのかと期待して目を開くと──
ギラギラと輝く双眸が先生を見つめていた。
「お前ッ、起きてたんなら」
その先の言葉は、強引に唇を奪われることによって遮られた。