0001それでも動く名無し
2022/12/03(土) 16:52:00.49ID:GM3L6jHy0押しまくられた前半。11分と想定外に早い時間帯に失点すると、ボール保持率もスペイン代表は80%近かった。日本代表としてはほとんどボールを持てず、パスを回す相手を前線の選手から追いかけ続けるばかり。前半だけを見る限り、日本代表の逆転勝利をイメージできたファンは、さほど多くはなかったことだろう。
しかし後半、勝負に出た森保監督はドイツ代表との第1戦で同点ゴールを決めた堂安律、敵陣を切り裂くように突き進む三笘薫といった切り札を2枚同時に投入。するとこの采配がずばり的中し、後半開始早々の同点ゴールにつながった。また逆転となるゴールも堂安が右からグラウンダーのクロスを入れたところ、三笘がラインぎりぎりで折り返したもの。点を取りに行くというはっきりとしたビジョンが共有されたことで、前線からのプレスも機能しボールを奪取、ゴールへとつながった。
劣勢からわずか数分の間での逆転劇。森保監督からすれば、これ以上ない展開に大喜びするところだ。たしかにVAR判定に2分30秒ほどかかった後に、ゴールの判定が決まった時は瞬間的に喜んだ。ただし笑顔が見られていたのもほんの10秒ほど。抱き合っていた選手たちがポジションに戻ろうとする前には、既に森保監督が真っ先に戦闘モードに戻り、大歓声の中でも指示を伝えるべく、何度も指笛を吹いた。リードをしてから逃げ切る方が、時間は長く感じるもの。強豪スペイン代表を相手に、残り40分以上も1点差を守り切れるのか。すぐに同点に追いつかれては、逆に追い込まれるのではないか。様々な考えが巡っただろう指揮官は、常に冷静だった。
試合後の会見で、森保監督はつらい思い出についてコメントした。「ドーハの悲劇」だ。あと少しのところでワールドカップ出場を逃したシーンと、同点に追いつかれれば決勝トーナメント進出が泡と消える状況が重なって思えた。ただし今の選手たちは、当時ピッチにいた森保監督ら先輩たちの涙を知っている。同じ失敗は繰り返さないとばかりに最後まで集中して体を張り、ゴールを守った。森保監督は、会見で選手たちを称えた。ただ、選手から指導者になってその経験を活かした監督自身の指示も、大金星を呼び寄せた。一瞬でも気を抜けばまた泣くことになる。その戒めを守ろうとした思いが、逆転ゴール直後の指笛に見えた。