自動車産業は、幅広い人たちに還元や分配を続けております。

 このコロナ禍においても、日本全国で約88万人の雇用が減少しているなかで、自動車産業は27万人の雇用増を成し遂げました。この27万人に平均年収500万円をかけると、約1兆3500億円というお金を、家計に分配しているということになります。

 これだけでなく、自動車・部品産業は2009年以降、賃上げ率は約2.2%/年となっており、これは全業種平均(約2.0%)を上回っております。

 しかしながら、この「流れ」の中に組み込まれているのは、私どもがよくいう「(自動車関連産業)550万人」のうちの約3割の人々であって(※)、残りの7割の人たちは現在「話し合いの場」にすら立てておりません。

 先ほどご質問にあった連合(日本労働組合総連合会)と経団連との話し合いですが、この話し合いは毎年やっておりますけれども、あれも(全労働者のうちの)約8割の方(※2)が話し合いに入れていない(組合化されていない)んですね。

日本全体の「賃上げ」を達成するためには、この(労働人口のうち「賃上げに関する話し合いの場」に立つことができていない)70~80%の人たちに、どう影響を与える活動をしてゆくか、ということだとわたくしは考えております。

 正直申し上げまして、継続的に昇給している会社って、かつて(マスコミから)褒められたことがありません。メディアの皆さんも、年始の賀詞交換会から「今年の賃上げはどうなりますか」、だとか、あとは「どこが満額か」、「そうでないか」という報道ばかりになります。この点について、マスコミ各社もぜひ「動き方」を考えていただきたい。

 いま、日本において広がりつつある「格差」をこれ以上広げないためには、中間層を中心に「みんなにどう働く場を与えていくか」だと考えております。そのために、何をどう報じるのか。

「自動車産業がやってきたことを見習ってほしい」などと横柄なことを言いたいわけではありません。言いませんが、我々は経済波及効果が高いがゆえに、ずっと以前から「分配」ということを考えてきた歴史があります。そのことについて、「我々はこんな動きをしてきましたよ」ということは伝えてゆきたい。

 話し合いの場につけた人だけが「達成できたよ」と喜ぶのではなくて、そういう場につけない人たちのために、どういう動きをすればいいのかを考えております。

 ですので、ぜひこの「春闘」というものが日本国民全体のためにどうあるべきか、それが国民の皆さんにどう映るのかも含めて、マスコミ各社の皆さまにもぜひご協力いただければと考えております。