ルサンチマンとは弱者が強者に対して抱くネガティブな感情である。だが、ニーチェによれば、これは単なるネガティブな感情ではなく、そこに「価値の転換」が含まれているという。

例えば、ニーチェはローマ帝国支配下のキリスト教徒を例に挙げ、彼らがルサンチマンを形成した過程を次のように説明する。

ローマ人は強く、キリスト教徒は弱い。

ローマ人は強い。したがって、彼らは悪である。

キリスト教徒は弱い。したがって、彼らは善である。

このように、弱い立場にある者が、強い者を「悪」であるとみなし、その対立項である自分たち弱者を「善」とみなすという転倒した価値判断がルサンチマンである。