0001それでも動く名無し
2022/12/15(木) 03:19:38.26ID:seQXO7hc0夜更けよりほんの少し前の時間帯、電話がかかってくるのは珍しい。
画面を確認すると、着信の主は旅行中のあいつからだった。厚かましいことにビデオ通話まで要求している。
「…何時や思てんねんボケ、アホ」
「明け方っすよ!」
弾けるような笑顔が画面に映し出された。くらくらしそうになって目を伏せると、日本とでは19時間もの時差があることを思い出す。
「ったく……で、どないしたん」
感想でも聞いてやろうかと口を開きかけたが、少し眠たくて用件を優先した。
俺がそう尋ねると、結んだままの唇がゆるやかに弧を描く。待っていましたと言わんばかりの妖しい微笑み。
嫌な予感がする。
「脱いでください」
突然、声色が反転した。
「まさかお前…」
「画面越しでもお互い出来ること…ありますよね」
その声に、その微笑みに、誘い込まれてしまう。
「───イイコト、しましょう?」