2019年11月に完成した国立競技場は、国が整備費のうち965億円を負担した。五輪後は民営化予定だったが、事業者選定の見通しは立っていない。今も維持管理費などに国費を充てる状況が続いており、会計検査院は今回、所管する文部科学省に民営化に向けた速やかな取り組みを求めた。

 文科省の当初方針では、国立競技場は20年秋ごろに運営事業者を選定し、早ければ22年後半に民営化する予定だった。しかし、新型コロナウイルスの影響で大会自体が1年延期され、事業者を取り巻く経済状況が変化したこともあり、民営化への取り組みは遅れている。

 検査院によると、国立競技場の維持管理費は独立行政法人・日本スポーツ振興センター(JSC)が負担しているが、運営収入との差額分は国が予算措置をしており、完成から22年度分までの負担額は計56億円に達している。また、22年度から土地の所有者である東京都と新宿区などへの賃借料の支払いが発生し、同年度は計10億円を支払った。

 文科省は21年11月以降、事業者に対して民営化に向けたヒアリングなどを実施しているが、選定は進んでいない。同省担当者は「速やかな選定に向け、スケジュールなどの見直しを含め検討しているところだ」としている。