楽天モバイル社員による46億円着服疑惑の影響で、下請け企業が経営危機に陥っている。楽天がその社員と関係の深かった取引先との契約を解除したため、そこに連なっていた下請けの資金繰りが連鎖的に悪化しているのだ。発注元の不正が、立場の弱い下請けにしわ寄せされた格好だ。



 工事のために確保した部材や人手は宙に浮いた。部材倉庫の賃料や取引先への支払いなどで資金は払底。従業員ら約30人も解雇せざるを得なくなった。堤信太朗社長(42)は何度も楽天やTRAILに救済を求めたが、なしのつぶてだったという。

 昨年12月、信和はTRAILを相手取り未払い金約1億4000万円の支払いを求め提訴。堤社長は「楽天社員による不正のつけを、なぜ真面目に事業を支えてきた下請けが負わなければならないのか」と憤る。

 日本ロジからTRAILを通じて部材の管理・輸送業務を任されていた2次下請け「IMAX」(相模原市)も不正のあおりを受け、昨年末に破産した。全国で約500人の従業員が解雇されたとみられ、給与や休業補償の未払いが相次いでいる。一部社員が東京都労働委員会に救済を申し立てるなど、混乱は収まらない。

 IMAXの契約社員だった千葉県の女性(51)は、昨年8月分の給料約20万円を今も受け取れていない。解雇された同9月以降、求職活動を続けているが再就職先はまだ見つからないという。女性は「こんなずさんな取引を許した楽天にも責任がある」と指摘し、救済措置を求めている。

楽天「対応や関与する立場にない」

 労働問題に詳しい水野英樹弁護士は「不正の疑われる取引先との契約解除はやむを得ないが、大企業の道義的責任として、下請けが倒産に追い込まれないように楽天が下請けに直接仕事を発注するなどの手立てがあってもいいのではないか」と指摘する。

 楽天は毎日新聞の取材に対し「個別の取引先からさらに業務を委託された取引先について、何らかの対応や関与を行う立場にはない」とコメントした。

https://mainichi.jp/articles/20230119/k00/00m/020/176000c