0001それでも動く名無し
2023/01/22(日) 04:14:26.53ID:D0IM8j7x0それでも眠れない日々よりは良かった。誰だって、時には悪夢を見て目覚める朝はあるだろう。
今にも泣き出しそうな顔をしているこいつだって。
「僕が、人の命を奪う夢を見たんです」
震える声で呟くと、その大きな体は俺に縋りついた。
普段からは想像出来ない、雑に触れてしまえば壊れそうなほど繊細な雰囲気を漂わせている。
俺に求めているのは何なのか悩んだ。いや、悩んでる時間なんてない。
「…どないして欲しいん?」
「……抱きしめて、欲しい」
「ええよ」
縋りつく体に腕を回して、そっと包み込む。背中をぽんぽんと叩いてやると、強ばっていた体が少しずつ柔らかさを取り戻しているような気がした。
俺たちは言葉を交わしてここまでやって来たんだ。今までだって、これからだって。
「大丈夫、お前のこと信じてるから」
「…じゃあ、好きって言って」
「好き」
愛の言葉と共に、涙で濡れたまぶたに口づけする。
いつもは素直になれないのに、今日はいくらでも甘やかしてあげられる気がした。