創建130年以上を数える栗山天満宮の社殿で、世界一を願う祝詞がおごそかに聞こえる。最前列でこうべを垂れる栗山監督は、歓喜の瞬間を思い描いていた。「最後、自分の中ではこのピッチャーが投げてガッツポーズしているイメージは作りながら、神事に向かわせてもらいました。さあ、行くぞ、と」。そう言って、口元を引き締めた。

 WBCも優勝の瞬間を思い描く。マウンドに立っているのは誰か。選び抜いた15投手のうち、チームでも抑えは栗林、大勢、松井裕の3人。湯浅も候補に挙がる。さらに-。1次ラウンドで先発した投手が、大会途中から後ろに回る可能性を問われ「もちろん。みんなが『これやるんですか』というのはゼロじゃない。それを考えるのが仕事」と即答した。第2回大会で開幕投手と胴上げ投手の両方を務めたダルビッシュの再現を示唆した。大谷にも、同じ起用はあり得る。

 最後は選手の状態、米国のマウンドとの相性、ルール上の制限がある球数や登板間隔などを加味する。「一応は決めてるけど、多分、後ろの形は流動的になっていく」。一番勝ちやすい形を「選ぶ」だけ。そこに収まる者が、侍ジャパン3大会ぶりの胴上げ投手となる。