ただし、人手不足といっても新卒なら誰でも歓迎されるわけではない。最近は採用企業の視線も厳しくなっている。とくにZ世代と言われる2016年以降に大学卒業した世代をはじめ、コロナ禍で入社した21年卒や22年卒の評判が決してよろしいとはいえない。

 Z世代と呼ばれる最近の新入社員は、最初に手にした携帯がスマホであり、情報収集やコミュニケーションの手段としてインターネットやSNSを駆使する。その一方で、SNSを通じて小・中・高・大学の横のつながりは広いが、上下の人間関係のコミュニケーションに不得手な人も多いと言われる。

 グロービスが採用・育成担当者を対象に、コロナ禍前に入社した新入社員と21年卒を比較した意識面や行動面などの変化を聞いている(「新入社員実態調査」2022年1月)。自由回答の各項目についてポジティブなコメントとネガティブなコメントの割合を算出しているが、「コミュニケーション能力」についてはネガティブコメントの割合が87.5%、ポジティブは12.5%にすぎない。

 また、「態度(積極性)」もネガティブコメントが82.4%と高い。自由回答では「気を使っているのか積極性がないように思う」「自分から情報を取りに行く姿勢が減った」という声が上がっている。

日本能率協会の「2022年度新入社員意識調査」(2022年9月12日)によると、新人に「仕事をしていく上での抵抗感」について質問をしたところ、「知らない人・取引先に電話をかける」に「抵抗がある」と答えた人が27.5%、「どちらかといえば、抵抗がある」が41.8%。計69.3%が抵抗感を持っている。関連の質問の「初対面の人と雑談をする」では計44.8%が抵抗感を持っていると答えている。

 しかし日本能率協会の調査では「あなたが理想的だと思うのはどのような上司や先輩ですか」という質問もしている。最も多かったのは「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」の71.7%。一方「場合によっては叱ってくれる上司・先輩」が17.6%。「叱ってくれる上司・先輩」は2012年の調査では33.7%と比較的高い割合だったが、その後漸減し、20年に19.9%と下がり、とくに今年の22年卒には不人気だ。

 叱り方にもいろいろあるだろうが、とにかく叱られるのが嫌では、育成担当の先輩や上司も困り果てるしかない。こうした特徴を持つZ世代の採用など企業はどう対応しているのか。倉庫業の人事課長はこう語る。

「学生を見ていると、ガツガツ働くのは嫌だ、何となく人生を安定的に過ごしたいというひ弱なタイプが多いように感じる。もちろん何事にも意欲的で、インターンシップでもやりたい仕事が明確な優秀な学生もいるが、それは少数。ひ弱そうに見えても採用せざるをえない面もある。2年前からストレス耐性を厳しくチェックするようにしているが、入社後の教育にも力を入れている」

 ただ、そうすることによって十分に戦力化できるわけでもない。人事課長は「ひ弱なイメージの新入社員が増えると、はたして10年後、会社は大丈夫なのかという思いが頭をよぎる」と言う。人手不足とはいっても、採用担当者の不安は尽きない。