練習開始前の朝、和田塾は開講する。いわば頭のアーリーワーク。2日のテーマは打球速度だった。「強く振り、速い打球を打つ」。今やアマチュアにも浸透した考えだが、あえて一歩目から説いた。
 「とにかく得点を増やさないと始まりません。勝敗に直結するのはOPS(長打率+出塁率)なんです。遅いゴロでは(内野の)間も抜けていかない。強い打球。そしてゴロよりライナー。(打球速度アップの先には)角度がありますが、そこはまた技術的な話にもなってくるので」
 中日ファンなら「得点力」と聞くだけで心がズキッと痛む。言わずと知れた竜のアキレス腱(けん)である。昨季414得点は、トップのヤクルトに200点以上離されたワースト。しかし、チーム打率は実は4位なのだ。劣っているのは長打力と出塁力。本塁打と四球数はいずれもリーグワーストだった。
 長打率を上げるには本塁打増が手っ取り早いが、簡単に打てれば苦労はしない。まずは速い打球を打とう。そうすれば二塁打や三塁打が増え、長打率も上がる。
 「そこから出塁率です。四球を増やすには選球眼ももちろん大切ですが、相手を怖がらせるのも重要です。警戒させるとボール球から入ってきますから」
 四球を出す理由は、投手の恐怖感である。だからこそ、一歩目が打球速度。強い打球が長打と四球を増やし、OPSが上がると得点力もアップする。生徒は眠い目をこすり、和田先生の教えを聞いた。なぜ速い打球が必要なのか。どうしてボール球を振ってしまうのか…。この先も配球学、打席での心構えなど、野球の「なぜ」をひもとくテーマが、いくつも用意されている。
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