札幌市が目指す2030年冬季五輪・パラリンピック招致は、東京五輪を巡る汚職・談合事件の影響で大逆風を受けている。スポーツへの信頼を回復し、冬の祭典を再び開催できるのか。東京五輪組織委員会で副会長を務めた自民党の遠藤利明総務会長(73)に聞いた。

―東京五輪の経費が当初想定から膨らんだ。無駄遣いとの批判もある。

 無駄遣いとは決して思っていない。無観客になったために投資効果は落ちたが、予定では10兆円程度のインバウンド(訪日外国人旅行者)による経済効果があると言われていた。
招致から(コロナ禍前の)19年までに7~8兆円のインバウンド増加があった。スポーツ大会は、投資に対し、経済効果や心身の健康増進などが全体でプラスになればいい。
 コロナ禍で余計な投資が必要だったことは事実だ。暑さ対策を徹底するため、施設に屋根を付けるなどの対応も必要だった。しかし、会場を変更したり、施設を仮設にしたりと、やれるだけの努力はした。何千億円かの経費を圧縮できた。

―遠藤氏は22年に本格始動した「日本スポーツ政策推進機構」の理事長に就いた。

 政策的なことを含め、スポーツに関する森羅万象について、横串を入れて情報共有する組織だ。ガバナンスなどの課題も、是正のために提言していく。これまでは各団体の横の連携がほとんどできておらず、他の団体や他国でやっているいい施策が共有されなかった。
私は「スポーツ界の経団連」と思っている。事業執行はしないものの、課題を情報共有し、一緒に政策提言していく。そういう組織にしたい。スポーツに関する学者や研究者の知見も反映したい。

 ―札幌五輪招致は、地元でも世論の支持を欠いている。

 汚職や談合事件があれば賛成しにくいというのはよく分かる。ただ、われわれももう一度招致活動のイロハを見直し、皆さんの理解を得られる形にし、改めてIOCと国際社会に問うことが必要だ。それを札幌市民に理解してもらわないといけない。
 スポーツや国際大会の開催によるプラスの側面はある。それをしっかりと訴えていく必要がある。東京五輪も、コロナ禍であれだけ頑張り、7割近い人が「良かった」と答えていた。スポーツの力をもっと生かしたい。