0001それでも動く名無し
2023/02/26(日) 02:06:42.08ID:RWxA8Zrb0僕のらしくない声色で察したのか、通話先の先生が電話を切ることはなかった。
きっと、分かってくれている。
「少しだけやからな」という言葉に安心して、抱えている心情を吐露した。
「…今のお前は、俺は好きやないな。むしろ嫌いなほう」
「どっ…」
僕の言葉を受け止めた先生の第一声に驚いてしまった。
どうしてそんなこと言うんすか、と言いかけた言葉は続く先生の声によって遮られる。
「弱気になってどないすんねん。俺と、俺らと勝負してた時、そんな態度してたか?」
去年の出来事を思い出す。
あの時の感覚を再び取り戻すことはできないけれど、断片は覚えている。
先生と戦っていた記憶は、僕の闘志を呼び覚ます。
「元気になったっす。ありがとうございます」
「ん。まあ、そう気負うなや。まだ本番やないからな」
「そうっすね…寝てリセットします」
「おやすみ」
「あ、最後にちょっと良いっすか。僕は、いつも先生が好きです」
そう言うと、電話口の先で小さく「アホ」と呟いた声が聞こえた。