岸田:僕ら、ニューミュージックは聴いていたけど、やっぱりJ-POPを卑下する文化圏で育っているんですよね。セルアウトするために、あえて「ワンダーフォーゲル」で“J-POP的”なチャレンジはしたけど、やっぱりくるりは通底してヴァース/コーラスや、より長いモチーフの追求とか、作曲優等生みたいなことをしてきたわけです。ただ、最近のJ-POPとかK-POPの高性能さから目を背けてはならないということは、Official髭男dismみたいなよくできた音楽を聴くと痛感するんですよね。

 以前、田中さんと電話で喋った時に「繁くん、ヒゲダンとかKing Gnuとかちゃんと聴いてる?」って聞かれて、「いや、聴いたことないですけど」って話したら「そういうのもちゃんと聴かなあかん。猿真似でもええからやってみ」って言われたんですよ。「ああ、はい」って言って、しばらくしてからヒゲダンを聴いたら、「これはすごい。影響を受けるべき音楽だ」と思ったんですよね。思ってもみない方に進化しているというか、何を聴いて何をやったらこうなるのかわからへんくらい、僕の個人的な音楽史観と全然違うことになっていて。まだ僕はヒゲダンに追いつけないんですよ。でも、ようやく最近のJ-POPの構造的なことなど、いくつかヒントを掴み始めているので、これは次の動きか、そのまた次以降に、自分の作曲の中に結実させていきたい裏テーマになってますね。

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